柏市立病院 再整備基本計画 (概要版)

この概要版は柏市議会議員から提供されたものです

1 これまでの経緯

平成 29 (2017 )年度に柏市健康福祉審議会に諮問した「市立病院の あり方」では,救急医療や小児医療など5つの役割が示されたほか,病院の 建替え条件として「病床利用率(80%)の達成」と小児科の入院体制の目処が立つこと」の2つが示された。
病床利用率の向上に取り組む中, 新型コロナウイルス感染症の流行により、感染症対応に注力することになった。その後、令和 3(2021 )年 11 月に,感染症がい つ収束するかわらな状態で病床利用率の向上を建替えの条件にすべきではないこと,また、場所については、地域おける医療体制のバランスが崩れる恐れがあるという点から、経営改善には引き続き取り組むものの,建替えの条件にはせずに、現地建替えを行うことを決定した。

これまでの経緯・概要(時系列詳細説明)は  こちら

2 全体計画

(新病院 の目指す姿)市立柏病院 での治療を必要とする患者に満足してもらえる病院

(1) 【患者の視点 】またかかりたいと思える病院
(2) 【スタッフの視点】 この病院 で働き続けたいと思える病院
(3) 【経営の視点 】 経営意識のある病院
(4 ) 【建築の視点 】 快適な療養環境を提供する病院

市立柏病院に期待される役割と機能強化の関係

  小児二次医療  ・・・ 小児二次救急の充実 ,小児発熱外来の維持、専門外来の充実
  急性期医療   ・・・救急搬送受入強化、HCU(高度治療室)の新設 ,救急科 (総合内科医 )・脳神経外科の新設
  在宅復帰支援  ・・・入退院支援部門の強化、地域包括ケア病棟の継続、入院患者のリハビリの充実
 日常的疾患対応  ・・・医療機関等との連携,在宅医療や介護の後方支援の強化、健診センターの充実
セーフティネット医療 ・・・新興感染症に対応できる施設 , 災害 に強い施設・設備,誰にでも使いやす施設

新病院の診療機能

➢ 急性期治療や二次救急を担う医療機関としての機能を強化するため,2つの診療科を新設
➢ 地域の二次医療機関として,また、公立病院としての診療機能や経営環境の強化のために、2つの部門を新設するとともに,特に5つの機能の拡充 を図る

予定標榜診療科 18 科
脳神経外科 【新設 】救急科 (総合内科医 )
【新設 】
内科内分泌・代謝内科
神経内科呼吸器内科
消化器内科循環器内科
肝臓内科腎臓内科
小児科外科
整形外科泌尿器科
眼科リハビリテーション科
麻酔科放射線科

新設・拡充する機能

新病院の施設規模

➢ 新病院の病床数は,本市の人口は緩やかな増加が続き、将来人口推計と比較しても実態が上振れしていることから,救急搬送件数の増加が見込まれることなどを踏まえて,合計 240 床とする
➢ 計画延床面積は,近年建設された同規模病院の 事例を参考に、病院の1床当 たり延床面積を84 ㎡と設定し,20,160㎡程度とする

急性期一般病棟196床程度
HCU(高度治療室)4床
地域包括ケア病棟40床程度
合計240床
計画延床面積20,160㎡

3 部門別計画

救急部門

➢ 二次救急に特化した診療体制を充実させ,搬送は全て 救急外来 で一元的に受入れ
➢ 新興感染症対応のために 発熱外来 を設け,発熱外来専用の出入口を設けるなど患者動線を分離
➢ 消防局救急隊員が,医師と連携して研修ができるスペーを確保

外来部門

ブロック受付方式(関連性の高い複数の診療科をブロック化)の採用,中央処置室・採血室の充実
➢待合表示システムや呼出表示システムの設置等,患者のプライバシーに配慮した設えを整備
➢携帯端末による呼出システムの導入や売店の配置場所検討など,待ち時間を有効に活用できる環境を整備

患者サポー トセンター

地域連携機能・入退院支援機能・各種相談機能等を一元化、患者や家族を総合的に支援
➢クリニカルパスの構築,ベッドコントロール機能などを集約し、病院全体の経営管理を充実
➢患者の利便性を考慮し,新病院 のメインとなる場所に配置

病棟部門

➢ 5病棟の急性期一般病棟,1病棟の地域包括ケア病棟、HCU 4床を整備
➢ うち 1病棟は新興感染症患者の受入れを想定, 流行状況に応じて,入院エリアを可変できるよう整備
➢ 病室個室は,重症患者・感染症患者対応と、療養環境向上の観点から、個室率 3~4割程度を確保

手術部門

➢ 高度化・複雑化・低侵襲化に対応した質の高い手術を実施
➢ 手術室数は,高度な清浄度を保つバイオクリーン手術室2室を含む,全4室を整備
➢ 医療機器の展開スペースや患者のリカバリースペースなどを整備し,手術室を効率的に運用

内視鏡部門

➢ 救急機能及び健診機能の強化に伴う,内視鏡エリアの充実
➢ 処置室・更衣室・トイレ等の設置により,患者のプラバシーに配慮した設えを整備

放射線部門

➢ 救急機能と感染症対策の強化に伴い,救急外来と発熱外来との動線とゾーニングに配慮して整備
➢ 健診機能の強化に伴い,健診部門からの動線に配慮して整備
➢ 地域医療への貢献として,円滑・迅速な病診連携を引き続き実施

検査部門

➢ 患者のプライバシーに 配慮した設えを整備するともに,感染症を含む検査機能・施設を強化
タスクシフト・タスクシェアの 推進 (採血業務・健診業務)に積極的に取り組む

薬剤部門

院外処方を現在同様推進し,病棟薬剤業務や入院時支援などの対人業務を充実
➢ タスクシフティングの推進や 治験管理業務を積極的に取り組む

栄養部門

➢ 調理 方式はクックサーブ を基本に, 一部クックチル導入し、栄養指導や退院後支援などの業務を充実

リハビリ部門

スポーツ疾患 や脊椎疾患、呼吸器疾患の入院のリハビリテーションを強化

臨床工学部門

➢ ME機器の中央管理を行い,機器の安全性の確保を図るとともに効率的に運用

健診部門

➢ 疾病予防と早期発見のため, 検査・画像診断機能を有効活用し、検診機能を強化

物品管理部門・中央滅菌部門

➢ 診療部門の 効率的な稼働や材料費削減を念頭に,適正かつ効率的に運用

管理部門・施設維持管理部門

➢ 管理部門の諸室を可能な限り集約配置・オープン化し, 職員の交流を促すようなエリアを整備
➢インフラ設備全般の一元的管理を行い,エネルギー安定供給や省エネルギー化を推進

共用部門

➢ 患者や家族, 職員などが快適に過ごせるよう、共用・利便施設を整備し、利用者の利便性を向上

4 その他の整備・運営計画

医療機器・什器備品整備計画

➢ 新病院でも継続して使用できる機器等の移設により調達費を縮減
➢ 新病院開院時に投資額(減価償却費)が集中しないよう調達時期を分散

情報システム整備計画

➢ 電子カルテシステム(H28導入)は,令和5年度に更新し,その後は,新病院の開院時期を見て,引き続き運用するか再度新規更新するかを判断
➢ 院内情報を統合データベースで管理し,連携医療機関や介護施設などとのスムーズなデータ連携も検討
➢ セキュリティへの対策,障害・災害時対応にも十分配慮

人員計画

➢ 新病院の診療機能・規模を見据え,段階的に医療スタッフを確保・育成
➢ 職員が働きやすい環境を整備し,働きがいのある魅力ある職場環境を創出

5 建物配置計画

建物配置計画

➢ 新病院の建物配置について,建設用地の確保の観点から,以下の3つの案(北側・中央・南西側)が考えられる


➢ 北側案は,高圧鉄塔やがけ地を含む規制・高低差による建設工事や設計の自由度に制約もあるが,特に,県道から
の救急車や来院患者の動線確保の観点からふさわしくない
➢ 南西側案は,建築面積と施設規模の関係から,1フロア1病棟の高層化した建物となり西側の住宅地へ長時間影が
落ちることに加え,現在の患者駐車場の代替地確保の目途が立たないことからふさわしくない

中央案は,建設工事の難易度が高くなることや工事期間が長期化する可能性があるが,既存建物の事前移設や解
体により建設が可能であり,現病院敷地内で最良の選択肢と判断した。しかし,既存の病棟や介護老人保健施設は
みんぐの診療・療養・居住環境への影響を全く無くすことは難しく,患者および入所者への心理的・肉体的な負担が発
生してしまうため,設計段階や施工段階にて最大限配慮した対策を講じる必要がある
➢ 新病院を敷地中央に設計・建設するにあたり,現病院および介護老人保健施設はみんぐの運営継続の視点,来院者
の交通利便性の視点,建物解体後の整備及び将来性の視点に留意が必要となる

最終処分場跡地との一体的整備

➢ 病院敷地の東側に隣接する最終処分場跡地側に出入り口を設け相互に往来ができるようにするなど,両敷地の一体
的な活用
に必要な設備や施設の整備を検討
➢ 病院へのアプローチ道路を複線化し,あわせて最終処分場跡地を利用する車両の通行にも配慮した整備を検討

6 施設整備計画

構造計画

➢ 病院施設の耐震性能は,「官庁施設の総合耐震計画基準」における耐震性の分類Ⅰ類として整備し,十分な耐震性能を確保

設備計画

➢ 電気設備は,大規模災害時にも業務継続が可能となることを基本とし,あわせて非常用発電装置を整備
➢ 給排水設備は,水道水の利用を基本とするが,災害時の給水確保のため井戸水の利用も検討

脱炭素化に向けた取組み

➢ 基本設計時に,整備や運用に係るコスト等を踏まえた上でZEB化を検討
➢ 地球温暖化対策の一環として,温室効果ガスの削減につながる太陽光発電設備の設置を検討

7 関連施設の方向性

介護老人保健施設

➢ 中央案での病院建設にあたり,B棟解体・撤去し,敷地内に仮設を設置することを基本
➢ 事務部門や給食調理など病院と共通する機能については一元化し,一体的・効率的な運営を目指す

院内保育室

➢ 既存の認可外保育所は解体・撤去し,新たに建物内に,病児・病後児保育を含む院内保育室を整備

医師宿舎・看護師宿舎

既存の宿舎は解体・撤去し,民間賃貸住宅の借上げで対応

8 整備手法とスケジュール

整備手法

➢ 現地での建替えによる建設工事の難易度の高さを考慮し,実施設計段階から施工者の技術協力を得るECI方式を採用

整備スケジュール

➢ ECI方式による整備スケジュールとし,令和10年度頃の開院を目指す

(Early Contractor Involvement方式)

9 事業収支計画

概算事業費

➢ 「柏市立病院のあり方(H29)」策定時の概算事業費(102億円)と比較すると,240床への増床に加えて建設費高騰や整備面積拡大(新興感染症対応等)により,建築工事費全体で約1.5倍に,当時の想定から時間が経過し大型機器の更新が開院時に集中すること等の影響により,医療機器等整備費で約2.2倍となります。
更にZEB化想定等経費を加えると,事業費全体としては約1.8倍
➢ 現段階の概算事業費は,総額181.2億円
※事業費は今後実施する設計段階で変更となる可能性あり


事業収支シミュレーション

➢ 減価償却費の負担が大きく,開院6年目までは赤字となりますが,病床利用率の向上など経営改善に取り組み,開院7年目以降の黒字化を目指す

(1)設計・監理費7.0 億円
(2)建築工事費※ 115.9 億円
(3)ZEB化想定(工事費等)14.1 億円
(4)外構工事3.0 億円
(5)解体経費4.8 億円
(6)医療機器等整備費33.6 億円
(7)設計・開院等支援1.8 億円
(8)移転費等1.0 億円
全体事業費181.2 億円
※事前移設等経費を含む
※将来的な物価上昇分は考慮していない

これまでの経緯・概要(時系列)

月日概 要説 明
平成25年3月(2013/3)柏市立柏病院中期構想を策定市民アンケート調査等の結果を基に、柏市健康福祉審議会市立病院事業検討専門分科会での審議を経て、柏市立柏病院中期構想(PDF:3,245KB)を策定し、同病院の将来像を定めました。
中期構想では、公立病院として小児救急医療や災害医療等への対応が求められるとし、小児科医の確保、病院の建て替えと経営改善を目指すこととしました。
平成26年3月柏市立柏病院整備基本方針を策定中期構想の建て替えの方針に基づき、「経営戦略」「整備基本計画」「資金計画」からなる柏市立柏病院整備基本方針を策定しました。そして、現在地と移転建て替えを含めて立地場所を検討するため、候補地の選定を行いました。
当初14候補地が挙げられ、審議会で現在地と柏の葉地区の2カ所に絞り込まれました。そして、最終的な候補地の決定は、市が判断することとされました。
平成26年9月柏の葉地区への移転を表明整備基本方針では、それぞれの候補地についての留意事項が示されており、市ではその検証を行いました。そして、検証結果を踏まえ、候補地を検討し、柏の葉地区への移転と現在地においてかかりつけ医の役割(一次医療)を維持することを表明しました。
平成26年11月市民説明会を開催同病院の課題と将来像、建設候補地の選定の経緯等に関する市民説明会を開催しました。
平成27年2月建替え事業の凍結を表明移転建て替えの方針については、理解できるとのご意見のほか、同病院の周辺住民のかたや市議会を中心に、多くの疑問や反対の声をいただきました。そこで、市民の皆様のご理解をいただけるよう時間を掛けて慎重に進めていくため、同事業を当分の間、凍結することとしました。
平成27年5月~12月57町会等で意見交換会を実施同事業の凍結期間中の取り組みとして、約7カ月にわたり、市民の皆様から、同事業等へのさまざまなご意見やご要望をお聞きすることを目的とし、町会・自治会・区等の単位で意見交換会を実施しました。
平成28年1月市立柏病院町会等意見交換会報告書を作成意見交換会に参加いただいた方達の様々なご意見を市民の皆様と共有するために、市立柏病院町会等意見交換会報告書を作成しました。
平成28年3月建替え候補地の議論を白紙にすることを表明医療をめぐる環境変化に伴い公立病院としての同病院の役割が改めて問い直されていること、さらに、市議会での議論や意見交換会等における市民からの意見などを重く受け止め、建設候補地をはじめとする同事業の方向性について検討した結果、建替え候補地の議論をいったん白紙とし、柏市健康福祉審議会市立病院事業検討専門分科会の場で同病院の役割やあり方から再検討することとしました。
平成28年5月~柏市健康福祉審議会市立病院事業検討専門分科会を開催学識経験者、病院経営者、小児科の医師等の医療関係者で構成された柏市健康福祉審議会市立病院事業検討専門分科会に対し、市長より「市立柏病院のあり方」について諮問を行い、審議を開始しました。
平成29年8月市立柏病院のあり方の答申平成28年5月から計9回にわたる審議の結果、平成30年8月10日に「市立柏病院のあり方」の答申がありました。
平成30年3月市立柏病院のあり方の策定柏市では平成29年8月に行われた答申に基づいて、平成30年3月30日に「市立柏病院のあり方」を策定し、同病院の方向性として位置付けました。内容については、「市立柏病院のあり方」の策定についてからご覧頂けます。
令和元年6月(2018/6)建替え条件の検証結果(平成29年度及び平成30年度取組み分)平成29年8月に、柏市健康福祉審議会から、市立柏病院の建替え条件として「病床利用率(平成30年度80パーセント)の達成」「小児科の入院体制の目処が立つこと」の2つが示されたことから、病院を運営する公益財団法人柏市医療公社において、条件達成に向けた取組みを行いました。
平成29年度及び平成30年度における取組みの達成状況や内容の検証を行った結果、平成30年度には小児科の入院体制を整えることができましたが、病床利用率は78.3パーセントにとどまり、目標達成には至りませんでした。
引き続き経営改善に向けた取組みを実施した上で、建替えについて、今後判断することとしました。
令和2年6月建替え条件の検証結果(令和元年度取組み分)柏市健康福祉審議会から示された、市立柏病院の2つの建替え条件のうち、「病床利用率(平成30年度80パーセント)の達成」について、平成30年度までに目標を達成できなかったことから、令和元年度も引き続き条件達成に向けた取組みを行いましたが、病床利用率は75.8パーセントにとどまり、目標達成には至りませんでした。
市立柏病院では、新型コロナウイルス感染症の影響で院内感染防止に注力しながら運営しています。病院の建替えについては、現在の状況に対応しつつ、経営改善を図った上で判断します。
令和3年6月建替え条件の検証結果(令和2年度取組み分)新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの医療機関が厳しい経営環境にあることを考慮して、令和2年度における病院建替えに関する取組みの評価は行わないこととしました。
なお、令和2年度の病床利用率は、56.9パーセントでした。
病院の建替えについては、引き続き感染症に対応しつつ、経営改善を図った上で判断します。
令和3年11月現地建替えを表明現在地における市立柏病院が、既に地域包括ケアの一翼を担っていることから、地域や市域における医療体制のバランスが崩れてしまう恐れがあるため、現在地での建替えを進めていき、経営改善の取組みについては、建替えの条件とはしないことを表明しました。


市立柏病院現地建替え対策委員会の活動記録(広報誌の抜粋)は こちら